携帯電話の普及で多くの人がインターネットで情報を得るようになり、部数の減少に歯止めの掛からない新聞業界は、「権力の監視」どころか最近は権力に擦り寄る傾向が強まっているように見える。「報道しない自由」を行使するから一般には知られないが、ときどき伝わってくる事実がある。
例えば、読売新聞のように財務省の事務次官であった丹呉泰健氏を監査役に迎えたり、新聞社側が紙面で復興増税を推進する代わりに、財務省側は、消費税増税しても、新聞に軽減税率を適用する取引まで行っている。しかし、ほとんどの人はこの事実を全く知らないままだ。
(拙エントリ【官僚とマスコミの癒着が書かせる!?増税賛成・TPP賛成論】参照)
復興増税はそのおかげで成立してしまったが、消費税増税のほうでも暗黙の約束か密約があるらしく、マスコミは今も必死のキャンペーンの最中だ。その関連なのだろうか、イザブログの『実業の世界』のyuyuuさんが我々が知らないこんな記事を紹介してくれた。共同通信の記事で、一部地方紙にしか載らなかったようだ。
全小中校図書館に新聞予算計上 15億円、NIEに弾み
政府は26日までに、公立の全ての小中学校と特別支援学校に新聞1紙を置く費用として15億円を2012年度予算案に計上した。図書館充実のための5カ年計画に盛り込まれた。学校で新聞を教材として活用する「NIE」(教育に新聞を)に弾みがつきそうだ。
文部科学省によると、昨年5月現在で、図書館に新聞を置いている公立の小学校は17%、中学は15%。新学習指導要領では新聞の活用が明記されており、日本新聞協会は今年7月、全学校の図書館に新聞を配備することを求める意見書を文科省に提出していた。
また、学校図書館の本を増やすための費用として200億円を計上。
2011/12/26 17:26
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011122601001231.html
共同通信はこの恩恵を直接受けないので記事にしたのだろうが、新聞各社はどこか後ろめたいから『報道しない自由』を行使したというわけだ。
yuyuuさんは『新聞15億円売上完了』というタイトルでこの記事を紹介し、ただ一言、次のようなコメントを付け加えているだけだ。(yuyuuさんの『実業の世界』)
今回の増税キャンペーンの代金ですか?
一言でこの記事が何を意味するかを表現しており、いつもながら感心する。
記事中の「NIE」というのはNewspaper in Educationの略で「教育に新聞を」ということらしいが、ホームページにはその活動内容を次のように書いている。
日本新聞協会は全国で500を超える小中高校をNIE実践指定校に認定し、一定期間新聞を提供して授業で活用してもらう活動を進めています。その地域で配達されるすべての新聞が提供されますので、新聞の読み比べもできます。
2011年度のNIE実践指定校は、全国47都道府県542校(奨励枠含む)です。
(NIEのホームページ http://nie.jp/)
現状たった542校では販売減少に悩んでいる新聞各社にとっては有り難味はないだろうが、今回は文部科学省の後押しと15億円を得たことで実践校を大幅に増やせることになる。
では実践校が増えるとどうなるか?
その前に、ずいぶん前から新聞が読まれなくなったと言われているが、実際にどれくらいの人が新聞を読んでいるのか見てみよう。

全体では40%くらいの人が新聞を読んでいるようだが、定期購読の所帯が約40%という調査結果(*)も有るので、この数字が定期購読している所帯の割合と考えてもそう大きな違いはないだろう。
特に注目してほしいのが、小中高校の親の世代と考えられる30代~50代の定期購読率である。
この世代は、男女とも1995年に比べて新聞購読する人が大きく減少している。しかし、学校で新聞が教材になるとなれば、親としてはほうってもおけず、結局定期購読することになるのではないか。この世代の定期購読が増え、子供も新聞に親しむことになれば、業界としても万々歳というわけだ。
教育の一環としてニュースを元に色々考えるのはいいとしても、権力と癒着してその意向に沿った記事を書いている新聞が教材になるというのは悪い冗談だ。ネットの情報と照らし合わせて、メディアリテラシーを養う材料にするなら大いに賛成だが、日教組の先生がそんなことをさせるはずがない。
NIEの活動がどういうものかちょっとのぞいてみると、こんな事例が見つかった。長野県NIE推進協議会のHPに、松川村立松川中学校3年C組が「沖縄新聞」というのを発行している。新聞を使った教育の成果というわけだが、その新聞の中身はこんな具合だ。
「沖縄新聞」 *タブロイド判・全12ページ
1面「沖縄の中学生は願う 僕たちの沖縄のことを考えて」
2面「壊してほしくない 辺野古の自然と住民の生活」
3面「基地返還で沖縄は変わる!」
4面「海に 陸に 空に 沖縄に残された傷跡」
5面「沖縄より守りたかった国体 松代大本営が語るもの」
6面「大田昌秀さんが語る鉄血勤皇隊の真実」
7面「ひめゆり学徒隊 平和への祈り」
8面「沖縄出身のシンガーソングライターユキヒロの思い」
9面「沖縄の文化と宝」
10面「若者に託す思い① 信州沖縄塾長・伊波敏男さん」
11面「若者に託す思い② フリーカメラマン・石川文洋さん/沖縄戦の語り部・親里千津子さん」
12面「本に託す 記憶・心」
http://www2.shinanoji.net/nie/2010/12/post_89.html
これは極端な例かもしれないが、これでは沖縄の左翼新聞2社そのままではないか。政府は、こんな教育を進めるという名目で新聞の販売促進費を税金から出しているのである。
今回の予算化は、増税キャンペーンの代金としては、15億円以上の大きな価値のあるプレゼントなのである。たった15億円でここまで熱心なキャンペーンをやってもらったら安いものだ。予算を作るのは財務省である。さらに消費税増税のあかつきには、低減税率のプレゼントも用意しているというわけだ。
権力と結びつき本来の使命を棄てた新聞は、結局信頼をなくし、ひたすら自滅への道を突き進んでいる。しかし、まだまだ彼らの力は侮れない。
だから、こういう事実をもっと多くの人に知ってもらいたい。
(以上)
(*)『新聞の購読』に関するアンケート http://reposen.jp/1859/8/23.html


by akira
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